プロジェクションマッピング

プロジェクションマッピング事例 
シンチャオ!さいたま ベトナムフェス2023

2023年9月1日(金)〜3日(日)の3日間、さいたま新都心けやき広場にて行われたベトナムフェスのステージ演出としてプロジェクションマッピング(以下PM)を実施、その概要をご紹介します。

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9月1日金曜日夜、さいたま新都心駅前のイベント会場けやき広場に出来た特設ステージには、会社帰りの人など多くの来場者が詰めかけていた。

時刻は午後7時15分、異常とも思えるほどの夏日が連日続いていたが、さすがに夏も終わりを迎えたこの時期は辺りも暗くなり、まさに絶好のPM日和。さらにちょうどスーパームーンとブルームーンが重なった巨大な満月。月明かりとプロジェクターの光でステージが浮かび上がる。

開会式のスピーチやベトナム音楽ライブが行われたこのステージもすでに後半の演出、演者が捌け、短い静けさが訪れた。観客の間に心地よい風が通る。

ステージを照らすライティングが消える。いよいよプロジェクションマッピングのスタートだ。

ロケハンは遡ること37日前の7/26(水)。いままでオンラインで打ち合わせを重ねていた関係者が、この日、現地にて初めて顔を揃えた。

今回は通常よりも制作期間がタイトということもあり、事前に支給された図面から投影設計をしておいた。

投影距離とステージのサイズからプロジェクターとレンズを選定、その設計を元にロケハンを進める。

<ロケハンにて各位置の測定>

とにかく暑い。日差しが強く肌に陽が当たると痛いくらいだ。滴る汗をぬぐいながら各所を計測していく。

プロジェクターを置くイントレの高さは2パターン検討していた。

ステージ正面に近い3mに置くか、より高い4.5mの高さまで上げるか。ステージに正対している高さの方がプロジェクターの光がはみ出さず光量は効率的であるし、また投影オブジェクトと映像コンテンツのズレも少ないため理想的。だが観客が立ち見であることを考えると、光が観客の後頭部にかかりステージに影が落ちる恐れがある。そこで今回は高い位置から投影することとした。

またその程度の高さであればレンズシフトで調整し、さらにメディアサーバーの補正でカバーできる。ロケハンにてステージと観客をイメージしながら決めていった。

<ロケハンと資料からプロジェクター/レンズを選定>

<プロジェクター台と雨養生の設計>

<イントレを設営しプロジェクターを設置>

<機材を守るため雨に備え養生も確実に>

今回PM映像コンテンツの制作はボーダーレスのCGクリエイティブチームが担当。

株式会社ボーダーレスは都内の映像制作を行う企業。2007年の設立以来、映像・動画制作サービスを提供し続けているおり、その実績数は業界でもトップクラスを誇る。

https://www.borderless-tokyo.co.jp/

社内にCGデザイナーを抱えており、今回のPM用のモーショングラフィックス制作に関しても社内でクリエーターを招集しチームを編成、分担して作業するワークフローを整えることで、短期間でコンテンツを制作する体制を取った。

その結果、短い期間にもかかわらず、クリエイティビティの高い効果的なPMコンテンツが出来上がった。

ロケハン現場にて各所と効果的な演出を打ち合わせる。

とにかく本番まで時間がない。映像コンテンツチームは、夏休み返上で作業する予定のスケジュール。予定では最終投影用データの納品は突貫で制作しているためギリギリになるとのこと。そこでCGによるシミュレーションを行い検証を重ねた結果、カメラマップという手法を使わずにメディアサーバーでの補正のみで対応できることを確認。変換に時間のかかるカメラマップは行わずに映像データのコーデック変換のみとし、マップ補正に関しては現場での調整とした。

<CGによるシミュレーション>

今回懸念点としては3点が上げられた。

1.投影オブジェクトの色。ベトナムの建物を模したステージ造作は、一般的に発色の良い白でなく、黄色がベース。窓はガラスで、扉など建具も色が濃いため映像が薄くなる。

2.周りの環境光。本番は9月とはいえ、当初の投影予定時刻であった18時台ではまだまだ暗さが足りず見えづらい。

3.観客の視点(ビューポイント)。スクリーンより観客が広がることで視点がバラバラとなり、見る位置によって効果的に奥行き感を表現できない。

そこで対策を考え下記で対応するととした。

1と2に関しては、今回プロジェクターの輝度12000ルーメンを3台用意。

投影方法については、スタック(プロジェクターを重ねて調整することで光をぴったり同じ位置に合わせること)することで明るくするということも検討したが、3台でのそれはどうしても位置が微妙にズレるため調整が難しく、何より映像で影など黒色を投影、もしくは何も投影していないとしても漏れた光が重なってオフジェクトに光が当たるため、コントラストが付かず黒が締まらないことで立体感のあるマッピングの効果が薄れるため不採用とした。

代わりに、ステージの造作を縦に3分割し、プロジェクターをポートレートモード(縦置き)で設置、境目をエッジブレンディングすることで、映像の繋ぎ目を目立たなく調整することとした。

3分割した各プロジェクターのスクリーン照度は420ルクスで設定。必要最低照度を1/10~1/5程度とした場合、42~ 84ルクス程度の暗さがあればきれいに見える計算だ。これは街灯の下程度の暗さがあれば十分に映像が見える想定となりプロジェクターの輝度としては十分だ。

3については奥行きを使っただまし絵的な演出の場合、厳密には視点による歪みは避けられないが、対象が横12mと大きくダイナミックな印象のため、極端に前方の左右などから見ない限りはそれほど気にならない。

上記の結果、明るくクリアな映像をステージの建物へ投影することができた。

イベント会期中の3日間、会場にはベトナムの雰囲気を楽しむ多くの観客が来場。屋台での食事や音楽ライブ、そしてプロジェクションマッピングを喜んでもらえた。夏の終わりの夜を彩る演出にチームの一員として参加できたことにこの場を借りてお礼申し上げます。

■ プロジェクションマッピング データ

▶︎ 主なフェーズ

5月上旬 問い合わせ
7月上旬 案件決定
7月下旬 ロケハン/打ち合わせ、PM設計
8月上旬 コンテンツ制作開始
8月下旬 会場設営/PM仕込み調整
9月上旬 イベント本番、PM上映

▶︎スケジュール:

08/30 Wed. 建て込み、仕込み、準備、PM調整
08/30 Thu. 建て込み、仕込み、照明調整、PM調整
09/01 Fri. 本番1
09/02 Sat. 本番2
09/03 Sun. 本番3

▶︎実施場所:けやきひろば(埼⽟県さいたま市中央区新都⼼10)

▶︎投影機材:

プロジェクター:EPSON EB-L1505U、12,000lm
レンズ:ELPLM10
メディアサーバー:Windows10(CPU 12th Gen Intel(R) Core(TM) i7-12700K 3.60 GHz / GPU NVIDIA GeForce RTX 3070 Ti)
アプリケーション:Resolume Arena 7
スイッチャー:マトリックス・スイッチャー Roland XS-84H

▶︎PMプロジェクトメンバー:

主催:シンチャオさいたま実⾏委員会
会場演出:株式会社エクス・アドメディア
映像制作:株式会社ボーダーレス
PM投影:アークベル株式会社

プロジェクションマッピングに関するお問い合わせはこちら

記事執筆:企画制作部 狩野 2023/09/07

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